COLUMN.

製造業における海外生産拠点開設の考え方

Date: 2026.04.15 Category: 製造業

はじめに

昨今では地政学的リスクが上昇しており、関税の上昇や特定国に対する取引の停止措置といった、日本国内企業のグローバル売上における事業リスクも上昇傾向にある。実際に、本件クライアントは国内生産に加え、一部製品カテゴリについては中国で生産しており、地政学的リスクの回避および生産拠点ポートフォリオの再構成の観点から新たな海外生産拠点開設の検討を実施するに至った。

本コラムが、今後の製造業の発展や製造業における事業リーダーの皆様の一助になれば幸いである。

海外生産拠点開設における検証の全体像

製造業における海外生産拠点開設は、供給(製造業者)観点での①製品の海外生産フィージビリティ、②海外生産拠点開設コスト、需要(顧客)観点での③調達リスク低減プレミアムによる許容調達コスト、④調達リスク低減需要ボリュームの4視点から検討し、製造業者が利益率を担保しながら顧客の許容調達コストに収めることができるかを検証する。

①製品の海外生産フィージビリティ

製品によっては作業者の熟練や原材料調達の制約、輸出入が制限されている特殊生産機械の必要性といった海外生産のフィージビリティが低いものが存在する。

海外生産拠点開設においては、特に作業者を既存生産拠点から全て移籍させることは現実的ではないため、現地産業としての成熟度や現地採用の可能性を検討初期に調査し、現実的に海外生産が可能かを検証する必要がある。

検証方法としては既存生産ラインにおける生産難度を確認するとともに、同製品および周辺製品の現地競合の存在や規模を調査する他、現地求人媒体を確認し給与水準を確認することで採用が困難な業種かどうかを検証する。

②海外生産拠点製品の想定調達コスト試算手法

海外生産拠点開設においては用地の取得、生産機械の調達を始めとする初期的なコストに加え、生産開始後に必要となる原材料や人件費、エネルギー費用や輸送費といったオペレーションコストが発生する。

特に調達リスク低減の観点では、既存生産拠点よりも各コストが高騰するケースが多いため、既存生産拠点と新規海外生産拠点における総コストを試算したうえで、単位あたりに変換して比較することが必要となる。

また、顧客視点では輸入品と現地生産で関税の負担額が変わるため、最終的な顧客の調達コストとして比較することが肝要である。

検証の第一段階としては、生産に必要な原材料ボリューム、エネルギー消費量や必要人員といった生産コスト要素を洗い出すとともに、新規海外生産拠点における拠点の場所や生産拠点の広さ、生産機械台数などシミュレーションの前提条件を整理する。

第二段階として、生産コスト要素の各単価を調査・推計し、海外生産拠点においては追加で用地の取得や工場の建設費、生産機械の調達費用といった初期コストをシミュレーションし、ボトムアップに足し合わせて生産にかかる総コストを試算する。最後に、総コストを元に稼働率ごとに単位あたりのコストを試算し、製造業者側の想定利益および顧客負担関税を加算することで顧客側想定調達価格をシミュレーションする。

③想定調達コストの妥当性検証

新規海外生産拠点における想定調達コストを試算後は、顧客が調達リスク低減プレミアムとして許容できる調達コスト上昇幅に見合うかを検証する。

エキスパートインタビューにより把握した調達リスクを低減できるとした場合に許容できる既存調達コストからの上昇幅を元に、想定稼働率ごとに試算した海外生産拠点製品の想定調達コストと現在の調達コストを比較することで、顧客が切り替え可能かを分析する。

妥当性検証においては調達コストの妥当性が担保できる稼働率の閾値を検証するとともに、生産拠点の立ち上がりおよび顧客からの想定受注ボリュームのランプアップを鑑みて経年の稼働率を試算し、各想定調達コスト別の収支をシミュレーションすることで営業時の提示価格検討にも活用する。

④調達リスク低減需要ボリュームの把握

想定調達コストの妥当性検証と並行し、顧客における調達リスク低減需要ボリュームの総量の把握も必要となる。

顧客における当該国の生産量/額と、それに紐づく調達量/額に加え、調達国の分散および調達方針を把握する。調達切り替えを検討している調達ボリュームにより、海外生産拠点の必要キャパシティと想定稼働率が決定されるため、現時点のシェア割および調達リスク低減を実現した場合に追加で獲得可能なシェア割を加味し、需要ボリュームも検証に反映する。

実行スケジュールの設定

海外生産拠点開設には工場の建設や許認可の取得に年単位の時間がかかる他、現地条例等が異なるため、国内生産拠点開設よりも必要期間が長引く傾向にある。

故に、初期コスト見積もりの精緻化/生産拠点開設の実行と併せ、顧客への前広な営業活動による初期ロット売先の獲得が国内生産拠点開設よりも重要度が高くなる。

生産拠点開設における用地取得や建設と並行し、既存/新規顧客向けの海外生産拠点製品の営業を実施する他、特に新規顧客においては、既存生産拠点製品の営業も強化することで納入実績を作ることも重要である。

地政学的リスクが上昇している現在、特に中国に生産拠点が多い製造業においては、新規海外生産拠点開設は最重要課題であると言えます。

我々は、国内に留まらず、グローバル市場も含めたサポート実績がございます。興味を持たれた企業リーダー様、ご担当者様は是非弊社にご相談いただければ幸いでございます。