COLUMN.
「パーパス経営」実践に向けたPMVVの定義手法
はじめに
「パーパス経営」はグローバルには2019年頃、日本国内では2021年頃より普及し始めた、比較的新しい経営手法である。従前から存在する経営理念やMVVといった概念よりも、さらに社会的意義にフォーカスした「パーパス」を導入することで、社内エンゲージメントや意思決定強度/ブランド価値を向上させる効果があるとして注目を集めている。一方で、実際にインパクトを創出できている事例は稀であり、ただパーパスを追加しただけの形骸化した「パーパス経営」となってしまうケースや、意図しないネガティブインパクトを発生させているケースが散見される。「パーパス経営」は組織力を大きく高める非常にパワフルな手法であると同時に、PMVVの定義と浸透いかんによっては既存の組織価値を毀損する諸刃の剣であると理解されたい。
「パーパス経営」の成否は、PMVV(Purpose/Mission/Vision/Valuesの略)定義の一貫性/組織適合性と、PMVVの浸透強度によるところが大きい。今回は、一貫性/組織適合性を担保したPMVVの定義手法についてご紹介させていただきたい。今後「パーパス経営」実践を検討している企業リーダーの皆様の一助になれば幸いである。
PMVVとは何か
そもそもPMVVとは一連の企業活動を別々の切り口から整理するものである。Purposeは「企業の存在目的/最終ゴール」、Visionは「ある時点の未来像」、Missionは「Purpose・Visionの実現に向けて自社が担う取り組み」、Valuesは「個人レベルの価値観や行動指針」を指す。PMVVの定義においては、下位要素を規定する上位要素から順に定義していくことが重要であるため、必ずPurpose→Vision→Mission→Valuesの順で検討を進める。

一貫性/組織適合性の担保の仕方
一貫性の担保
一貫性の担保に関しては前述の通り、上位要素から順に定義していくことで大枠の一貫性を担保できる。ありがちな落とし穴としては、下位要素、例えばMissionを規定する際にPurposeの議論に立ち戻るといったループの発生がある。ループが発生した場合は、関連する定義済みの下位要素全てを一貫性の観点から再考することが必要である点に留意し、原則立ち戻りを禁止するといった議論ルールを適用することが有効である。また、議論参加者を大人数に設定するケースも散見されるが、こちらも一貫性担保が困難になるため避けるべきである。全社員からの公募といった手法により当事者意識醸成を狙う場合もあるが、PMVVの「定義」と「浸透」は別論点であり、弊社支援実績上長期間の検討期間≠質の高いPMVVであることからも少人数制のウォールーム形式での検討進行・トップダウンでの浸透推進を推奨する。
組織適合性の担保
組織適合性の担保としては、現組織の特性の見極めおよび目指す組織特性のすり合わせが肝要である。組織の特性によりあるべきPMVVの内容や表現も異なるため、時にはマネジメントとして打ち出したい組織特性と現実とのギャップといった理想と実態の乖離をも受容し、実態に即した組織特性を特定することが重要である。一例として、弊社支援先ではないが、マネジメントは高い社会意義・強いアスピレーションを打ち出したいと考えている一方、実態のビジネスモデルは情報の非対称性が大きい市場における、高い営業力によるマージン獲得が強みという企業が存在した。同社はPMVVの方向性をアスピレーション主導組織に寄せた結果、理念と実態に深刻な乖離が生まれ、経営戦略や人材採用において矛盾を招き、組織健全性を損ない定着率低下/エンゲージメント低下というネガティブインパクトが発生した。次項では特に重要な現組織特性の見極めについて留意点を記載する。
組織特性の見極めの仕方
組織特性の見極めは自社組織を多角的に俯瞰することから始める。具体的には、過去の経営戦略や勝ち筋における組織能力、人事制度といった組織の仕組み、社風といった要素を鑑み、自社組織が何によってまとまっているのかを判断する。加えて、顧客価値の観点から客観性を担保することも肝要である。組織特性の見極めは時に自社組織の弱さが浮き彫りになるが、組織特性には一長一短があり、あらゆる面において優れている設計は存在せず、むしろ何かに特化させることで最大限の強みを発揮できるという点に留意し、必要に応じてあるべき組織特性として目指す方向性を定義されたい。
PMVVの浸透推進
最後に、本稿におけるPMVV定義が出来た後には全社への浸透が重要である。PMVVは定義して終わりではなく、トップマネジメントから現場レイヤーまでの展開による実務領域への接続が無ければインパクトを創出できない。インパクト創出のためには、PMVVの定義と併せて、①トップの発信、②ミドルマネジメントによる「翻訳」、③人事制度への埋め込み、④業務プロセス・意思決定基準への接続、⑤測定と改善の5つのレバーを用いた浸透が必要である旨には留意されたい。
「パーパス経営」実践に向けて
事業の基盤である組織の高度化において、「パーパス経営」は非常に有用な手法と言えます。我々は、PMVVから経営計画への繋ぎ込みといった、事業領域までの一貫したサポート実績がございます。また、本領域における組織特性の見極めに有効な「ハイパフォーム組織の類型」や「顧客価値の類型」、Purpose導出の「4C」といった独自フレームワークを保有しております。興味を持たれた企業リーダー様、ご担当者様は是非弊社にご相談いただければ幸いでございます。
ご参考: 弊社独自フレームワーク
<PMVV議論Tips>

<ハイパフォーム組織の類型>

<顧客価値の類型>

<Purpose導出の4C>
